エンジニアの分際

ブログというよりも自分のためのブリコラージュ

やるべきことは変わらない

2007 年より東京大学工学部社会基盤学科(旧名は土木工学科)で行っている講義の解説内容をまとめたもの。

技術者として働く場合には、企業経営の理論なんて関係ないと思うかもしれません。

しかし、自分の所属する技術部門が会社の経営方針とどういった関わりをしているのか、いま自分がやっていることはその流れのなかで、どのように関わっていくのか、いくべきなのかを理解しながら日々働き続けることは、それを理解しないで働いているよりは、同じ時間を働いていても、得るべきものやできることが大きく変わっていくでしょう。

エンジニアの分際で、読み物としては面白いと思った。でも、中身をすっ飛ばして、はじめにと第一部の終わりと、あとがきを見ると、

経営学は、生き残るための教養だ!

会社の暴走を回避するために社員としてできることというのは、実態としてほとんどありません。

たとえ光が見えなくとも、やるべきことは変わらない。

中身で気になったところを3点だけ書き出すと、

経営者の目線が「短期化」している

報酬の仕組みが毎期の利益に紐付いていることが多いので、株主が誰であろうと、毎期きちんとリターンを出そうという意思が強くなります。その弊害として、必要以上のリストラを行ってしまったり、長期にわたるプラン、研究開発や設備投資についての優先順位が下がってしまったりするリスクはあります。

評価自体よりも納得できる評価かどうか

著者の経験則ですが、こうした状態の時に最もストレスを感じる状態は、その理由が理不尽だと感じられる状態よりも、(判断の背景が)何なのかさっぱりわからない状態のほうです。

その企業の資源は何か

キーマンの馬力というか、気合いと根性と睡眠時間の犠牲のうえに成り立っているのではないかと思います。

ファジーとビジー

引用:「ソニーも大将が変わればがらりと変わる」

大曽根:あいまいさを意味する「ファジー」って言葉が流行ってた時代を知っているかな? その頃は「上司がファジーだと、部下がビジーになる」っていう教訓も言っていたんだ。これなんかまさに、近年のソニーの経営をうまく言い表しているでしょ。トップの言葉や方針が曖昧でよく分からないと、現場が迷走してムダに忙しくなるってことだよ。

これは、すこし意外と感じた。意識調査で busy という文字が word cloud によって見える化された場合、多くの経営者は従業員が忙しく働いていることを、よい兆候と認識するのかと思っていた。

たこつぼ(2)

SONY 平井改革の1500日

SONY 平井改革の1500日

第2次平井体制のもとソニーは再生の兆しを見せる。 エレ5分野5年ぶりの黒字はソニーブランド復活の証か

第2次平井体制

2015年4月の第2次平井チームはまさに異見を言えるメンバーを集めたと強調する。

平井が掲げる「ワンソニー」の理想の体制に近づけた。

改革の主要メンバーは、ゲーム、ネットワーク、モバイル分野から1人づつ、エレキ事業より技術系1人。

技術系が経営の中枢に入るのは久しぶりのことだった。

問題はすでに割とはっきりしていた。エレキの再生しかないと私は思っていた。

改革の基本方針

  • 各事業で一律に規模は追わず、利益率を重視する経営を目指す
  • 各事業ユニットが自立し、株主視点を重視した経営を行うこと
  • 各事業について、今後3年間の事業ポートフォリオ上の位置づけを明確化し、その位置づけから経営資源の投下のメリハリを決定する。ソニーグループ全体としては、ROEを最も重視する経営指標に改める。

日立製作所の改革の焦点と類似する点は事業の自立(分社化、完全子会社化)。これが、いわゆる The Silo Effect へのひとつの答えとも思える。

分社と団結の両立

これまでの経営トップが掲げてきた方針とは正反対に映る。平井の前任であるハワード・ストリンガーは事業間の縦割りの壁を「サイロ」と呼び、これを打ち壊そうと、「ソニーユナイテッド(団結)」を繰り返し叫んだ。

昔はソニーの工場は閉鎖的でした。事業部との結びつきが強く、商品のための工場だった。工場間で競い合い、話し合うことは少なかった。

ポイントはグループ各社で担当事業を遂行する立場であっても、「ソニー株式会社」の執行役員である点だ。分社化した子会社のトップに、個別最適に走るのではなく、全体最適の発想をより強くもたせる。

カギは分社化された子会社の経営者が横とつながる姿勢をもつことと指摘。現場の連携を強められるかどうかが、分社の最大の課題だと話す。

インターナルネゴシエーションからエクスターナルアカウンタビリティーを重視しよう。つまり、社内倫理を優先する意識を改め、外部への説明責任、資本市場の信頼を得ることを重視しようと呼びかけたのだ。

成長牽引分野 デバイス分野 ゲーム&ネットワークサービス分野 映画分野 音楽分野

安定収益分野 イメージング・プロダクツ&ソリューション分野 ビデオ&サウンド事業

事業変動リスクコントロール領域 テレビ事業 モバイル・コミュニケーション分野

唯一、全部をつなげるのは「感動」だ。お客様にこれはすばらしい、かっこいい、これは欲しい、と思ってもらえる。そして役に立つ。これがひとつの軸で、すべてのビジネスにつながっている。

事業には仕込みが必要だ。それも3年で成果が出るものもあれば、10年かかるものもある。自分の在任期間で成果を出せるか否かにこだわってはだめだ。自分の在任期間に結果が出ないことにもがんばって取り組もう。

社風(社長風)

まずは創業者の井深大の「設立趣意書」の基本である創造と挑戦の理念に戻ろうと呼びかけた。

「いたずらに規模を追わず」 「技術界の多くの知己関係と我が社の特徴を最高度に活用」

など趣意書を今の時代に合わせてどう腹に落とすかを議論した。

改革時の団結に創業者(ソニーの井深大、日立の小平浪平、アップルのスティーブ・ジョブズ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグなど)の理念が寄与する割合は想像以上に大きのかもしれない。

規模の大なるを追わず

黒字の時代に売り上げはずっと平坦だった 赤字を境にテレビ事業の売り上げが伸び始めた

利益は単なる規模の拡大に依存するのではなく、イノベーションにより新しい価値の創造により確保するべきだ。

「規模の大なるを追わず」

このキーワードは今ではテレビにとどまらず、ソニーのエレキ事業全体の改革の合い言葉となっている。

顧客とのつながり、感性に訴える

今までのスペック重視のエレキではダメだ。感性に訴える商品やサービスこそ、あるべき姿」と語る。

シェアを追っていた時代は新規顧客の開拓に比重を置いていたが、高付加価値商品に絞る場合は、顧客とのつながりの深さが大切になっている。

消費者や顧客のソニーに対する期待感が昔に比べて弱くなっていると語る。

今後は消費者の心理なども加味してマーケティングを設計するエンジニアのような人材が必要になる。

イノベーションを興そうとしていたら、いつのまにか上司説得に変わっている。意思決定を即決にし、失敗には寛容であったほうがいい。例えば、管理職に一定の決裁権限があっても、失敗がペナルティーとみなされれば、人はリスクを取りたくはない。おもしろいことにチャレンジすること自体を評価軸に捉えるのもひとつの手だろう。

挑戦は評価されるというメッセージを示す。

社会イノベーション(2)

異端児たちの決断 日立製作所 川村改革の2000日

異端児たちの決断 日立製作所 川村改革の2000日

このブリコラージュをはじめるきっかけとなった社会イノベーションと日立製作所の川村・中西体制の経営改革 (2009~2014) の記録。

幼いころに偉人の伝記を読んでワクワクしたような読後感。

悲観は気分に属し、楽観は意思に属す。

意思に基づいて明るく、行くべき道を示し、希望をもって微笑みながら集団を引っ張る力こそがリーダーの条件なのだという。

日々の研鑽を重ねることの真の目的は、人生の岐路に立った時に、我が行くべき道を選ぶ決断力を養うためにある。

日立製作所の事業

成長の原動力は電力会社、鉄道事業者、通信会社、金融機関といった特定顧客との長期にわたる安定した取引だ。

一度消費者に売ってしまえばおしまいという単品事業は大規模な量産を得意とする韓国や中国企業の追い上げで、最終製品の価格が下落する「コモディティー製品」と化した。

中流のコモディティー事業を遠ざけて残ったものをつなぎ合わせると、日立の事業は自然と「社会イノベーション」になった。

巨額の赤字に苦しむ本当の原因は非効率なグループ運営によるところが大きい。

改革の焦点

  • 出血している事業のリストラ。近づける事業と遠ざける事業の峻別
  • 社会イノベーション事業で世界に出る成長戦略
  • 上場子会社を取り込み、社外に流出している利益を取り込む
  • 社内カンパニー制で事業部門を自立させる

分社化、完全子会社化

低成長時代に入ると企業グループの筋肉質化が求められるようになり、親子上場はグループの利益を少数の社外株主に流出させる悪しきシステムと見られるようになった。

今世紀以降、リストラ局面に入った電機業界の歴史を見てみると、この構造的な問題にまずメスを入れたのはソニーだった。ソニーは 2000 年1月、上場子会社であるソニー・ミュージックエンターテインメント、ソニーケミカル、ソニー・プレシジョン・テクノロジーの3社を、全額出資の子会社にした。当時、ソニー・ミュージックの傘下にあり、家庭用ゲーム機「プレイステーション」でグループの利益の3割以上を稼いでいたソニー・ミュージックエンターテインメントを取り込むことが目的だった。

これに対し、1994 年にソニーが導入した「カンパニー制」にある問題を推測すると、分社化、完全子会社化と比べその情報公開レベルが低いことによって、カンパニーの社長たちが「経営者」になりきれていないということが考えられる。当然のことながら事業分野をどのように複数のサイロに切り分けるかということも重要な問題。

技術と管理の比率

23人の専務と常務は意思決定の会議から外そう。今はスピードが最重要だ。重要な意思決定はこの6人で決める。

改革の意思決定を行った6人の内訳は技術部門出身が3人、管理部門出身が3人。

ソニーとの比較The Silo Effect のその後) 引用:オレの愛したソニー:日経ビジネスオンライン

一番心配しているのは、技術が分かった上で経営もできる人材がどのくらいいるのかなってこと。現在は取締役会にも技術系の人材はいないよね。これでソニーの経営を監督できるのかね。

よく考えてみてよ。ソニーが作るものって、ほかの電機大手と違って白物家電はないし、社会インフラを担うようなものでもないし、軍事関連製品でもないよね。全て生活必需品ではなくて、やっぱりおもちゃなんだよ。

ソニーという会社の経営の難しさと凄さは、一つか二つのヒット商品があるかないかで、売上高や利益が大きく変動しちゃうことなんだよ。

成長の原動力がもともとコモディティー事業のヒット商品にあったソニーは、その改革が比較的長期にわたっている。

夢をかなえる集中講義

引用:YouTube

Imagination: Attitude: Engaged Action: Envision

Before it’s your passion, it’s something you know nothing about.

Creativity: Attitude: Motivated Action: Experiment

You just need a little motivation to do a little experiment.

Puzzle builders are people who have excuses. Truly creative people are quilt makers.

Pretotyping - Put McSpaghetti on the menu at McDonald’s before even making a prototype.

Innovation: Attitude: Focused Action: Reframe

Frame-storming questions before brainstorming for 100+ solutions.

Entreprenership: Attitude: Persisted Action: Inspire

Tell a compelling story.

対話の技術

Crucial Conversations Tools for Talking When Stakes Are High, Second Edition

Crucial Conversations Tools for Talking When Stakes Are High, Second Edition

頭に血が上った時に、感情的な口論をするのではなく、黙って会話をやめてしまうのでもなく、いかに対話を続け前向きな結果を出すか。

数年前に VitalSmarts 社の In-house Training に2日間参加したことがあり、これは大学の必須科目であってもいいのではないかとも思う。

本で読んだ場合、第1章には、なぜこの対話の技術が必要かということ(例えば口論をしなければ寿命が延びるとか)が書かれている。

A growing body of research evidence shows that when leaders invest in creating a Crucial Conversations culture, nuclear power plants are safer, financial services firms gain greater customer loyalty, hospitals save more lives, government organizations deliver dramatically improved service, and tech firms learn to function seamlessly across international boundaries.

こんな理由で原子力発電所の安全が守られなかったら怖い。

When it comes to the corporate world, the most common complaint of executives and managers is that their people work in silos.

律儀に初めから読むと、次の性悪説ともとれる一節を見て、ここで読むのをやめてしまう人がいるみたい。

We’re generally on our worst behavior. Why is that? We’re designed wrong.

When their software product doesn’t ship on time, they benchmark others’ development processes. When productivity flags, they tweak their performance management system. When teams aren’t cooperating, they restructure. In the best companies, everyone holds everyone else accountable—regardless of level or position.

第2章以降に書かれていることは、すぐに実践することができ、成果もわかりやすい。

When it’s safe, you can say anything.

Step out of the conversation and Make It Safe. When safety is restored, go back to the issue at hand and continue the dialogue.

  • Apologize when appropriate.
  • Contrast - Start with what you don’t intend or mean. Then explain what you do intend or mean.
  • Create a Mutual Purpose - Do others believe you care about their goals in this conversation? Do they trust your motives?
Both these reactions—to fight and to take flight—are motivated by the same emotion: fear.

口論 (fight あるいは violence) も沈黙 (take flight あるいは silence) もどちらも最善策ではない。

Focus on What You Really Want When you find yourself moving toward silence or violence, stop and pay attention to your motives.

“What do I want for myself? For others? For the relationship?” “How would I behave if this were what I really wanted?”

Refuse the Fool’s Choice See if you’re telling yourself that you must choose between peace and honesty, between winning and losing, and so on.

Break free of these Fool’s Choices by searching for the and.

Clarify what you don’t want, add it to what you do want, and ask your brain to start searching for healthy options to bring you to dialogue.

和 (peace) を保とうとして、誠意 (honesty) をもって何かを伝えようとしたことを諦めてはいけない。(Fool’s Choice)

カルチャー

Culture isn’t something you “fix.”
Cultural change is what you get after you’ve put new processes or structures in place to tackle tough business challenges like reworking an outdated strategy or business model. The culture evolves as you do that important work.

Ecolab - Public acknowledgment mattered even more than financial incentives over time.

Delta - The higher compensation demonstrated that management cared about its people, further feeding the culture of trust.

Ford - In time people realized that being honest allowed them to work together and find solutions more quickly, and their charts reflected what was really happening in their units.

Novartis - Collaboration and alignment across divisions should not be forced in a growing company.

企業カルチャーの改善はケースバイケースで、その成功例は企業によって180度違う場合もある。