社会イノベーション(2)
- 作者: 小板橋太郎
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2014/07/31
- メディア: 単行本
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このブリコラージュをはじめるきっかけとなった社会イノベーションと日立製作所の川村・中西体制の経営改革 (2009~2014) の記録。
幼いころに偉人の伝記を読んでワクワクしたような読後感。
悲観は気分に属し、楽観は意思に属す。
意思に基づいて明るく、行くべき道を示し、希望をもって微笑みながら集団を引っ張る力こそがリーダーの条件なのだという。
日々の研鑽を重ねることの真の目的は、人生の岐路に立った時に、我が行くべき道を選ぶ決断力を養うためにある。
日立製作所の事業
成長の原動力は電力会社、鉄道事業者、通信会社、金融機関といった特定顧客との長期にわたる安定した取引だ。
一度消費者に売ってしまえばおしまいという単品事業は大規模な量産を得意とする韓国や中国企業の追い上げで、最終製品の価格が下落する「コモディティー製品」と化した。
中流のコモディティー事業を遠ざけて残ったものをつなぎ合わせると、日立の事業は自然と「社会イノベーション」になった。
巨額の赤字に苦しむ本当の原因は非効率なグループ運営によるところが大きい。
改革の焦点
- 出血している事業のリストラ。近づける事業と遠ざける事業の峻別
- 社会イノベーション事業で世界に出る成長戦略
- 上場子会社を取り込み、社外に流出している利益を取り込む
- 社内カンパニー制で事業部門を自立させる
分社化、完全子会社化
低成長時代に入ると企業グループの筋肉質化が求められるようになり、親子上場はグループの利益を少数の社外株主に流出させる悪しきシステムと見られるようになった。
今世紀以降、リストラ局面に入った電機業界の歴史を見てみると、この構造的な問題にまずメスを入れたのはソニーだった。ソニーは 2000 年1月、上場子会社であるソニー・ミュージックエンターテインメント、ソニーケミカル、ソニー・プレシジョン・テクノロジーの3社を、全額出資の子会社にした。当時、ソニー・ミュージックの傘下にあり、家庭用ゲーム機「プレイステーション」でグループの利益の3割以上を稼いでいたソニー・ミュージックエンターテインメントを取り込むことが目的だった。
これに対し、1994 年にソニーが導入した「カンパニー制」にある問題を推測すると、分社化、完全子会社化と比べその情報公開レベルが低いことによって、カンパニーの社長たちが「経営者」になりきれていないということが考えられる。当然のことながら事業分野をどのように複数のサイロに切り分けるかということも重要な問題。
技術と管理の比率
23人の専務と常務は意思決定の会議から外そう。今はスピードが最重要だ。重要な意思決定はこの6人で決める。
改革の意思決定を行った6人の内訳は技術部門出身が3人、管理部門出身が3人。
ソニーとの比較(The Silo Effect のその後) 引用:オレの愛したソニー:日経ビジネスオンライン
一番心配しているのは、技術が分かった上で経営もできる人材がどのくらいいるのかなってこと。現在は取締役会にも技術系の人材はいないよね。これでソニーの経営を監督できるのかね。
よく考えてみてよ。ソニーが作るものって、ほかの電機大手と違って白物家電はないし、社会インフラを担うようなものでもないし、軍事関連製品でもないよね。全て生活必需品ではなくて、やっぱりおもちゃなんだよ。
ソニーという会社の経営の難しさと凄さは、一つか二つのヒット商品があるかないかで、売上高や利益が大きく変動しちゃうことなんだよ。
成長の原動力がもともとコモディティー事業のヒット商品にあったソニーは、その改革が比較的長期にわたっている。