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イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

本書に書かれているのは、

顧客の意見に注意深く耳を傾け、新技術に積極的に投資し、それでもなお市場での優位を失う優良企業の話である。

つまり「顧客の意見に注意深く耳を傾け、新技術に積極的に投資」することは、既存事業を持続し成功させる方法であるとともに、まったく同じことが破壊的イノベーションで失敗する方法でもある。

優良企業が失敗するのは、経営者が「破壊的イノベーションの法則」を無視したか、この法則に逆らったためである場合が多い。

マーケティング

実績がある企業が破壊的技術に直面したとき、開発における最大の課題は技術的なものであり、既存の市場に合うように破壊的技術を改良することだと考えるのが普通である。

破壊的技術の商品化に成功した企業は、開発における最大の課題は、マーケティング上のものであり、製品の破壊的な特性が有利になる次元で競争が発生する市場を開拓するか、見つけることだと考える。

先駆者が圧倒的に有利なのは、市場のことがほとんどわからない破壊的イノベーションの場合である。これがイノベーターのジレンマである。

マーケティング担当者のほとんどは、大学や職場で、顧客の意見を聞くという重要な技能をたたき込まれるが、まだ存在しない市場を発見する方法については、理論的にも実践的にも教育を受けるものはほとんどいない。

起業家

主要企業が迅速に破壊的技術で地位を築くことに成功したのは、経営者が自律的な組織を設立し、破壊的技術の周辺に新しい独立事業を立ち上げる任務を与えたときだけである。

これには、買収もしくは新会社を起業するか、企業内で新事業を起業するかである。すでに実績がある企業にも起業ができる文化が求められる。

新会社を設立せずに、主流組織の内部で改革を行って成功した例は少ないのかもしれない。本書にはディスクドライブ業界で 1982 年にマイクロポリスの設立者メイボンが行った一例があるが、

メイボンは 5.25 インチ・プログラムに十分な資源を確保するために「18 ヶ月にわたって、自分の時間とエネルギーを 100% つぎ込んだ」という。 経営者の超人的な努力により、5.25 インチ・プログラムには成功した。 メイボンは当時のことを、人生で最も疲れきった経験と話している。

具体的な方法論の記述はない。

短絡的に考えれば、破壊的イノベーションで成功するには、経営者の起業家としての超人的な努力が必要。

学習のための計画

ひとつのバリューネットワークに複数の破壊的イノベーションが同時に起こるなど、さらに大規模な産業革命となった場合に非経営者は何をすれば良いのか。

破壊的技術の場合には、慎重な計画を立てる前に、行動を起こす必要がある。

計画にはまったく別の目的が必要である。それは、実行のための計画ではなく、学習のための計画でなければならない。

破壊的技術に対処するには、マネージャーが仮定を立て、その仮定にもとづいて事業計画を作成する必要のある「発見志向の計画」が有効である。

破壊的技術の新しい市場を発見するためのこのアプローチを、著者は「不可知論的マーケティング」と呼んでいる。破壊的製品がどのように、どれだけの量が使われるか、そもそも使われるかどうかは、使ってみるまでだれにも、企業にも顧客にもわからないという明確な仮定にもとづくマーケティングとの意味である。 このような不透明な状況に直面したマネージャーは、だれかが市場の輪郭をはっきりさせるまで待とうとすることがある。しかし、先駆者が圧倒的な優位に立つことを考えると、破壊的技術に直面したら、実験室やフォーカス・グループで活動するのではなく、市場へ発見志向の探索に出かけることによって、新しい顧客と新しい用途に関する知識を直接身につける必要がある。

人生のさまざまな課題に挑むときと同様、世の中のしくみを理解し、順応するようにイノベーションへの努力をマネージメントすることには大きな価値がある。